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CDSという仕組みが普及したおかげで投資家は実質上、リスクをとらずに済み、CDOをより買いやすくなるわけです。
その意味では、CDSの普及は住宅バブルをいっそう加速させる方向に働いたともいえます。
CDSは、例年に金融工学を駆使して開発ざれ登場しました。
リスクを回避するために、当時としては誰もが画期的だと思った金融商品でした。
その後、契約書のひな型が整えられて整備され、取引の仕組みができあがるとともに急速に拡大しました。
2001年にその保証対象額の残高が1兆ドル規模だったものが、○年には約○兆ドルを超えました。
この過程で、金融保証に特化した保険会社(モノラインといいます)も次々に生まれました。
これが大きな問題になるのは、次々と住宅ローンが焦げつき始めたからです。
大量に発行されたCDOが損失を生み始め、CDSを売った保険会社では支払うべき保証金額がどんどんと膨らんでいったのです。
保険会社が破綻するとどうなるのでしょうか。
損失が補償されないとなると、CDSを購入していた会社Aは、時価会計にその損失を計上しなくてはならなくなります。
リスクをヘッジ(回避)し、一度は存在しないことになっていたはずのリスクが突然復活して、自らに襲いかかってくるのです。
保険会社は、サブプライムローン関連の証券化商品に対してのみ、CDSを販売していたわけではありません。
破綻の影響はほかの証券化商品に対するCDSを買っていた投資家たちにも及び、それぞれの投資家はリスクをヘッジできないまま、リスクを丸抱えすることになってしまいます。
そうなると、投資活動はストップすることになり、金融システム全体が根底から揺らいでしまいます。
サブプライムローン問題の本当の恐ろしさは、このCDSに潜んでいると言う人もいるほどなのです。
R・Bが破綻した2日後の○年9月○日に、世界最大の保険会社AIGが、ニューヨーク連邦準備銀行から2年間で850億ドルを上限にした融資を受けることが承認されたのは、第1章で書いた通りです。
AIGはCDSによって莫大な利益を上げていましたが、サブプライムローン問題の拡大により、CDOの損失が拡大し、補償を迫られることになったわけです。
その後、AIGはさらに経営が悪化し、○月には融資枠を5年間で600億ドルと下げる代わりに、公的資金が150億ドル注入されることになりました。
この対応は、サブプライムローン問題の深刻さを示していると同時に、一連の証券化商品の売買でCDSという保険が果たしていた役割の大きさをも示しています。
リスクヘッジの難しさは、次のようにもいえます。
投資会社の1社や2社がリスクヘッジをするというのならばいいのですが、国中あるいは世界中が同じ一つの仕組みに乗ってしまえば、ヘッジにはならないということです。
将来の住宅価格が上がると言う人と下がると言う人がいるからこそ、市場のなかでリスクをとる人、ヘッジする人のバランスがとれて、証券化商品はうまく機能するのです。
ところが、住宅価格が上がっていくほうに全員が乗ってしまうと、マクロ全体ではバランスが崩れてしまいます。
そうならないようにするのが金融政策であり、FRBの役割でもあります。
在任当時は金融の神様と呼ばれたG前FRB議長は、回顧録『混乱の時代』でこう言っています。
「住宅価格が上がっているときに、それを抑制するようなことは民主主義の社会ではできない」と。
政治家が言うことならまだわかります。
それでは金融政策をコントロールできないから、あえて国民によって民主的に選ばれない、政治から独立した専門家を、中央銀行の総裁すなわちFRB議長に置いて権限を与え、大局的な判断を求めているのです。
FRB議長は、みんながバブルに乗っているときには、それにブレーキをかける。
誰からも指図されず、効力のあるブレーキをかけられるからこそ、その地位が与えられているのだと思います。
それができなかったことを民主主義のせいにしてしまうと、何のためにFRB議長が存在するのかわかりません。
それがなぜできなかったのかを考えると、新自由主義の考え方による市場原理主義と結びついているからだと思います。
もし、本当に、資本と国家と国民が結びつきながら発展していくというかつての資本主義の物語(「大きな物語」と呼べるでしょう)が広く信じられていたなら、政府がここでバブルを止めようと言えば、みんなが従ったかもしれません。
FRBの役割は、みんながパーティで盛り上がっているところで、さあお開きですよと言って、パンチボウルをさっさと下げることだ、W・M氏(1951〜○年まで四年間FRBの議長を務めた)はFRBの役割についてこう述べています。
嘗ては権威ある政府、およびFRB議長がいるのだったら、それに従ったほうが自分たちの利益になるという暗黙の合意があったのです。
しかし、金融経済が実物経済よりはるかに大きくなり、資本の力が強くなると、資本を持っている人はもっと利潤を増やしたいと思うようになり、資本家(いわば株主)と資本をたいして持っていない人の間で、利害が一致しなくなってきたのです。
グリーンスパンでもバブルを止めることはできなかった。
彼は「バブルははじけてみないと、バブルだとわからない」と言い、仮にバブルだとわかったとしても、「かなりの景気後退をもたらす政策を容認してくれる有権者は現代の民主主義社会には資本の側がそうだったとすると、国民の側はどうだったのでしょうか。
アメリカの住宅ローンは残高でおよそ○兆ドル。
そのうちサブプライムローンは1兆3000億ドルで、全体の約1割ほどです。
規模からすると、サブプライムローン問題は上澄みの部分だということもできます。
アメリカで起きた今回の住宅バブルは企業ではなくて個人が対象でした。
無理にローンを組むことで被害を受けたのは主に低所得者で、家を持って家族とともに働いて、将来、中産階級になる夢を持っていた人たちの夢を奪い取ることになってしまいました。
アメリカの社会全体に深い傷を与えたのです。
これに対して、日本のバブルでは、土地や住宅に投資したのはほとんどが企業で、企業と銀行の間で資産をキャッチボールする形でバブルを膨らませていったわけで、バブルが崩壊しても、多くは企業の犠牲の範囲にとどまりました。
アメリカで起きたことというのは、日本で大学生をワンルームマンションに住まわせた末に、住宅バブルがはじけてしまったというのとは、レベルが異なるのです。
結局、資本が国家と国民を裏切ったのです。
○世紀初頭、東インド会社が誕生したことは、資本と国家と国民の三位一体の関係によって資本主義が生まれたことを象徴する出来事でした。
サブプライムローン問題は、肥世紀末のフランス革命を経て成熟してきた、この資本と国家と国民の三位一体の関係を断ち切ることで、いままでの資本主義の終わりを象徴する出来事だったのです。
中産階級の「夢」の消滅であり、サブプライムローン問題で露呈する証券化商品の複雑さや危うさは見てきた通りですが、アメリカはなぜそのようなものまでつくり出して、世界中から資金を集めようとしたのでしょうか。
アメリカはもともとそういう国の姿をしていたわけではありません。
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